介護現場のIT化が進まない原因は?対策や導入するメリットを解説

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慢性的な人材不足が起きている介護現場では、IT化が重視されています。

IT化をおこなえば業務効率化につながり、介護スタッフの介護サービスにおける品質が向上するなど、さまざまなメリットがあります。

しかし、以下のような理由からIT化が進まないと悩んでいる方も少なくないでしょう。

  • IT化のための資金が不足している
  • IT導入環境が整備されていない
  • 法律や規制上の問題がある
  • 介護スタッフのITスキル不足
  • 教育・研究の機会が不足している

将来の人材不足に備え、介護現場ではIT化が非常に重要なため、早めに対策を講じる必要があります。

本記事では、介護現場のIT化が進まない原因や対処方法を詳しく解説します。

関連記事:介護現場にICTの導入が求められる理由は?メリット・デメリットまで徹底解説

介護現場のIT化が進まない原因は?

介護現場のICTが進まない現状

介護現場のIT化が進まない原因として、以下のことが考えられます。

それぞれ詳しく解説します。

原因1:IT化のための資金が不足している

介護施設や事業所の多くは利用できる予算が限られており、ICTやソフトウェアの導入にコストを割くのが難しい場合が多いです。

サブスク型のモデルの場合は導入後にランニングコストが発生したり、システムアップデートに資金が発生したりするため、導入のハードルが高いといえるでしょう。

原因2:IT導入環境が整備されていない

PCやスマートフォンの導入、クラウドシステムを活用したい場合は、ITを利用できるインターネット環境やVPNなどのセキュリティ対策が必要です。

介護事業所の多くは、コスト不足やIT人材不足によって、IT導入環境が整備されていないケースが少なくありません。

ITを活用するための環境がうまく整備されていない点が、介護現場のIT化が進まない原因と考えておきましょう。

原因3:法律や規制上の問題がある

介護業界は厳格な法的規制により、IT導入が進みにくい状況です。

特に患者データの管理やプライバシー保護に関するルールが厳しく、システム導入時には法律や規制を遵守する対策が求められます。

法規制を満たすにはデータの暗号化やアクセス制限、多要素認証などのセキュリティ対策が必須ですが、専門知識や追加コストが必要になります。

介護業界の法律・規制が厳しく、うまくITを導入できない点が、介護現場のIT化が進まない原因であると考えておきましょう。

原因4:介護スタッフのITスキル不足

介護スタッフのITスキルが不足している点も、介護現場のIT化が進まない原因として挙げられます。

多くの介護スタッフは、PCやモバイル端末の操作に苦手意識を持っており、ITの導入にハードルが高いと感じているケースが少なくありません。

実際にITを導入してから定着するまでは、時間をかけて勉強会や研修などをおこなう必要があるでしょう。

しかし、人手不足の介護現場では時間をかけて勉強会や研修を開催するのが難しいほか、そもそものITスキル不足でうまく運用できない点が問題といえるでしょう。

介護現場でのIT化が重要な理由

介護現場のIT化が重要な理由は、以下のとおりです。

それぞれ詳しく解説します。

IT化を進めるべきかどうか迷っている方は、介護現場のIT化が重要な理由を確認してみてください。

業務効率化につながるため

介護現場のIT化が重要な理由は、業務効率化につながるためです。

事務作業やルーティンワークを手作業でおこなう場合が多く、介護スタッフ一人ひとりの業務負荷は高い傾向にあります。

手作業の場合はヒューマンエラーが発生する可能性も高く、作業効率が高いとはいえないでしょう。

そこで、日常の記録や報告書をITツールで入力できるようにしたり、データが自動集計されるようにしたりすれば、介護スタッフの業務負荷を減らせます。

生産性向上による人件費の削減もメリットです。

介護の需要に対して人材の供給が追いついていないため

高齢化社会である現代での日本は、介護の需要が高くなっています。

厚生労働省の調査では、日本の人口が2070年には9,000万人を割り込み、高齢化率が39%の水準になると報告されています。

厚生労働省の介護職員必要数
出典:介護人材確保に向けた取組について | 厚生労働省

しかし、2040年の時点で介護需要に対して介護スタッフが約57万人不足すると考えられており、深刻な人手不足であることがわかるでしょう。

人材不足のままでは介護スタッフの業務負荷が高くなるため、IT化による自動化や業務効率化によって削減する必要があります。

参考:我が国の人口について|厚生労働省

参考:介護人材確保に向けた取組について | 厚生労働省

高品質な介護サービスを提供するため

介護現場のIT化は、施設・事業所全体の業務効率化につながるため、高品質な介護サービスを提供できるようになります。

介護記録をICTデバイスに入力すれば、インターネットを通じて利用者の家族や関係者間、施設・事業所内でスムーズに情報を共有できます。

また、IT化が進めば業務効率化にもつながるため、介護スタッフがコア業務に集中する時間が増えるでしょう。

高品質な介護サービスを提供すれば、利用者の満足度も高くなるため、人手不足の介護業界においてIT化は非常に重要といえます。

介護現場のIT化が進まない場合の対処方法

ICT化の進んだ介護現場

介護現場のIT化が進まない場合は、以下の対処方法を実践してみてください。

それぞれ詳しく解説します。

ICT導入支援事業を活用する

介護現場のIT化がなかなか進まないと悩んでいる方は、ICT導入支援事業の活用がおすすめです。

ICT導入支援事業とは、介護現場へICT機器や設備を導入する際に発生した費用を国が負担してくれる厚生労働省管轄の補助金制度です。

IT化を進めるためには、ITインフラの構築やIT機器、ITシステムの導入など、初期費用コストが高くなるケースが少なくありません。

ICT導入支援事業であれば、要件を満たせばIT化にかかわる金額を一定額補助してもらえるため、導入のハードルを下げられます。

ICT導入支援事業の要件

・「LIFE」による情報収集・フィードバックに協力すること
・他事業所からの照会に対応すること
・都道府県へ導入計画と導入効果報告を提出すること(導入効果報告は2年間必要)
・IPAが実施する「セキュリティアクション」の「一つ星」または「二つ星」のいずれかを宣言していること
・ICTの活用により収支状況の改善が図られた場合は、職員の賃金に還元すること(導入効果報告により確認)

教育体制を整備する

ITに苦手意識がある介護スタッフは多く、研修や勉強会などの教育体制を整備しておくと、導入のハードルを下げられる可能性があります。

状況に応じてITコンサルタントへ導入の伴走を依頼したり、研修会社を利用したりしてIT化に必要な研修を実施するようにしましょう。

外部業者へ委託する場合は、事業所全体のITスキルのレベル感に適したサービスを選べば、ITの導入が比較的ラクになります。

セキュリティに配慮したシステム・機器を選定する

介護現場のIT化を進めたい場合は、情報セキュリティに配慮したシステムや機器の導入が重要です。

ITシステムは便利ですが、誤送信やヒューマンエラーによって利用者の個人情報が漏洩するなどのリスクがあります。

はじめから難易度の高いシステムを導入するのではなく、介護スタッフが取り組みやすい機器から順番に導入するようにしましょう。

IT機器に慣れる期間を設けておけば、ITに対する苦手意識を除去できる可能性があります。

介護現場のIT化が進まないことに関するよくある質問

介護業界の人材不足がピークになる時期はいつですか?
厚生労働省の調査によると、介護業界は2040年度に介護スタッフが約57万人必要とされています。

年間3.2万人の人材を確保する必要があり、より多くの人材を採用するためには介護現場のIT化や採用戦略の強化など、さまざまな取り組みが必要です。

参考:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省
介護業界向けIT資格はありますか?
介護業界向けIT資格として、スマート介護士が挙げられます。

スマート介護士は、介護ロボットや介護センサーなどのITツールを活用し、介護現場の業務効率化やサービスの品質向上を図れる介護士を証明できる資格です。

ITに苦手意識の多い介護現場でITスキルを証明できれば、より多くの場面で活躍できます。

まとめ | 介護現場のIT化を進め将来の人材不足の対策をしよう

介護現場で業務効率化や品質の高いサービスを提供する場合は、ITツールやシステムの導入がおすすめです。

しかし、適当に導入するのではなく、現場職員が利用しやすいものから順番に活用していくようにしましょう。

必要に応じて研修や教育の機会を設けることも、介護現場のIT化をうまく進めるための対策の一つです。

介護現場のIT化を進め、人材不足による業務負荷の削減やサービス品質低下の対策をおこないましょう。